特別対談 松本大×井上哲男  アベクロ・バブル 100年に1度のチャンスがやってきた

特別対談 松本大×井上哲男
アベクロ・バブル100年に1度のチャンスがやってきた
現代ビジネス2013年03月26日(火)週刊現代


世界が日本株を買っている

松本 今回の相場は、過去の上昇相場とはまったく性質が違います。デフレを容認していた国が、デフレをやめて緩やかなインフレを目指すというのは、ギアを1速から2速に入れるというレベルではなく、バックギアから前進ギアに入れるようなもの。つまり、日本経済の土台がガラリと変わるということです。これは過去のITブームで上がったというような相場とはレベルが違います。

井上 私もそう思います。特にその変化に早く気付いたのが、海外の投資家たちです。デフレ先進国だからと日本株投資に消極的だった人たちが、「日本は変わった。買い遅れるとまずい」と焦り始めた。日本株を持たないことが彼らにとって恐怖に変わったんです。

松本 私の知っている海外投資家たちも、「これは何十年に1度の相場だ」「いや、100年に1度の相場だ」と言っていますよ。しかも、最近すごいなと思ったのが、海外の「日本株ファンド」だけでなく、「グローバルファンド」までもが日本株を買いにきている。

井上 ポートフォリオの中で、日本株の組み入れ比率を上げていますよね。

松本 日本株を専門にしている日本株ファンドが買うのは当然ですが、世界各国の株に投資するグローバルファンドが、「日本株が足りない」と言って買っている。相場がフラフラせずにしっかりしているのは、こうした背景があるからです。

井上 というと。

松本 だって、ドル円相場というのは昨年11月中旬とくらべて、すでに18円近く安くなっていますよね。これは世界中で日本企業が作るあらゆる製品が、数ヵ月前にくらべて2割も安くなっているということです。強烈な競争力ですよね。しかも、トヨタ一社だけでも、1円円安になるだけで350億円ほど儲けが増える。自動車業界だけで約1000億円、18円円安となれば1兆8000億円くらい余計に儲かるわけです。

井上 ちなみに、東証1部上場企業全体の最終利益合計(見込み値・年度ベース)は13兆円ほど。そう考えると、1兆8000億円のインパクトは大きい。

松本 だから、アベノミクスの3本目の矢=成長戦略が実行されないと相場が続かないという議論がありますが、これも間違い。もちろん成長戦略というのは長い目で見れば必要ですが、いますぐに実現しなくても、現在の為替水準が続くだけで、日本企業は十分に国際競争力を戻すんですから。

給料は上がる、心配ない

井上 でも、ここまで円安に急激に振れると、諸外国から日本の通貨政策批判が出るのではとも言われています。日本ではかつて'05~'06年に株高局面があったのですが、'06年の5月から6月にかけて1ヵ月程度で日経平均が1万7400円くらいから1万4000円まで下落した。というのも、円安推移していたところに米国から為替操作国として名指しされるとの懸念が出て、ドル円相場が118円から110円まで急激な揺り戻しがあったことが背景にありました。今回も当時の悪夢が再びかという不安の声も出ています。これはどうお考えですか。

松本 私はそのリスクは低いと思いますよ。なぜならアメリカではいまシェールガス革命が起きていることで、放っておいてもドル高になっていくので、いちいち円安について文句を言って来ないでしょう。ドイツにしても、もともとユーロ危機でユーロがものすごく安いときに濡れ手に粟で儲けていたのが彼らなんですから、メルケル首相が通貨安批判なんて、おかしな話です。逆にいえば、いまは円安でもあまり文句を言われない、ラッキーなタイミングなんだと思います。

井上 しかも、日本ではこれから「国際通」の日銀幹部が新しく就任する。

松本 仮に日本に対して文句を言ってくるとすれば、アジアの国の可能性が高いですが、そうした国々との意見調整はアジア開発銀行総裁だった黒田東彦・新日銀総裁に期待できます。欧米の金融当局についても、(新日銀副総裁の)中曽宏さんがスイスのバーゼルなどで世界各国の金融担当者と会議をやってきたので、きっちりコミュニケーションできるでしょう。

井上 では、円安になっても製品価格が上がるだけで、給料が上がらないから、庶民の生活は苦しくなるという指摘については、どうですか。私も一時的にそうした痛みが出ることは避けられないと思うのですが。

松本 私は心配していません。給料は上がっていきますよ。いままでの歴史を見ても、株価が上がっている時期は、資産の値段が一番上がり、次に給料が上がり、その次に物価が上がっている。つまり、給料の上昇の幅のほうが物価の上昇の幅より大きいんです。


井上 今回の相場のポイントは、海外の投資家が「買い戻し」ではなく、「買い」に入っていることだと思うんです。どういうことかといえば、日経平均は'09年3月に安値をつけましたが、その後に日本株が上げる局面というのは、海外の投資家が「買い戻し」、つまりカラ売りしていた株を決算していたに過ぎないんです。それが、去年の12月中旬からは「買い戻し」が終わって、買い増す局面に変わった。海外の投資家による日本株投資が純粋な「買い」になったのは、'05~'06年以来のことです。

松本 現在の相場を指して、「期待感だけで株が上がっている」という指摘がありますよね。私はあれも間違っていると思うんです。

 そもそも、いまの日本経済の状況を考えると、急激なインフレは起きません。なぜなら、企業が高い生産技術を持っていて、生産量のコントロールもできる時代に、モノがなくなるというのは考えにくいからです。逆に、さきほど言ったように資産の値段は上がって行く。だから、株と不動産の値段が上がって、さらに物価より多めに給料も上がるという理想的なパターンでいけるのではないかと思っています。

井上 トヨタも今夏のボーナスについて、労働組合側の要求に対して満額回答しましたし、ローソンも給料アップを宣言しています。産業界がアベノミクスの流れを断たないよう、迅速な対応をしているのは心強いですよね。デフレの呪縛から解けても、その後に、景気が悪い中での物価上昇=スタグフレーションが起きてしまってはなんにもならないわけですから。たとえ給料より物価のほうが早く上がったとしても、それは一時的な痛みだと認識することが大切ですね。

 では、「100年に1度」のこの上げ相場をどう楽しめばいいのか、という話に移っていきましょう。

9月にドカンとくる

松本 まず、先ほども言いましたが、政府がデフレからインフレ容認に大きく舵を切ったことで流れが変わったというのが大きなポイントです。そして、流れが変わったときには、その流れに乗るのが一番大事。これからは円安になるし、物価も上がってくるので、まず円預金をしているのが一番損になります。株や不動産を買うか、外貨預金などをしないといけない。

井上 そもそも株を買う本来の目的というのは、インフレに対するヘッジ(リスク回避策)であるという考え方ですよね。

松本 あと、流れが変わったときにもうひとつ大事なのが、その流れはいつか終わるということ。今回の場合でいえば、もし政府内やマスコミ、世論で「やっぱりデフレがいいよね」「インフレは嫌だよね」という意見が強くなってきたら、そのときはいったん流れから降りなければなりません。

 以上のポイントを押さえた上で、どんな銘柄に投資をすればいいかというと、私はよくこう言うんです。「あなたに年頃の子どもが10人いて、彼らを好きな上場企業に就職をさせることができるとすると、どこに就職させますか」と。

井上 おもしろいですね。

松本 10銘柄を選んでというと頭が真っ白になってしまう人が多いですが、こう考えると冷静になれる。しかも、みなを同じ企業に入れようとは思わない。一人は成長性の望めるIT業界、また一人は鉄道などの安定的なインフラ企業に、とか考えられるわけです。

井上 しかも、自分ではなく、自分の子どもというのがポイントですよね。いつか誰かの面倒になるかもしれないから、全員がダメになってはいけない。株式投資の基本である、リスク分散が自然とできる。

松本 ちなみに就職人気ランキングのトップ企業10社に投資した場合の成績を試算したことがあるんですが、ボロボロでした(笑)。

井上 私はシンプルに、まずは四季報やチャート誌で気になった銘柄をみつけたら、まずその企業のホームページを見る。開いた瞬間、手を抜いているなという印象を持ったら次の銘柄に移る。上場企業は3600社近くありますから、玄関の汚い家を訪れている暇はありません。次にホームページのIRのページに行く。きちんと個人投資家向けに説明会を行っているか、資料も開示しているかなどをチェックするんです。業績の悪い企業はここにおカネをかけられないので、ここがきちんとしていなかったらダメ。シンプルですが、こうして選んで行くといい銘柄に出会えることが多いですよ。

松本 とにかく、こんな明るい話題で対談できるのは、ほんとうに何年ぶりか(笑)。私は年内は日経平均1万5000円、ドル円は100円と予想していますが、〝びっくり箱〟で来たら面白いと思うのは、オリンピック。もし東京に決まれば、いい感じになってきた日本経済に、最高のおまけがつくと思います。

井上 日銀の総裁副総裁が替わり、彼らが春先から動いてくる。さらに政権は緊張感を持って夏の参院選に入ろうとしている。その次の9月に、オリンピックが決まると……。

松本 ドカンときますよ(笑)。もう大変ですよ。これはお楽しみとして、オリンピックが来たら上がりそうな銘柄みたいなのも、いまから見ておきたいですね。

まつもと・おおき/'63年生まれ。マネックス証券代表取締役社長CEO。近著に『お金という人生の呪縛について』(幻冬舎)
いのうえ・てつお/'63年生まれ。共栄火災などを経て、MCPアセット・マネジメント証券チーフ・ストラテジスト


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