【「お金」は知っている 】 安倍首相は消費増税の再検討を 英国の失敗教訓に…

安倍首相は消費増税の再検討を 英国の失敗教訓に…
ZAKZAK2013.04.05
連載:「お金」は知っている



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データ:CEIC

 政府はこのほど、2014年4月と15年10月予定の消費増税時に、商品やサービスの増税分の価格転嫁を促す特別措置法案を閣議決定した。大手スーパーなどによる「消費税還元セール」を禁止するなど、「お上」である各省庁が商取引に介入するという、中国もびっくりするような社会主義手法である。

 消費需要が低迷するデフレ下での消費増税自体が無理なのだが、日経新聞に至っては3月25日付の社説で特別措置法の早期成立を国会に催促する始末だ。自由な経済原則をねじ曲げることを何とも思わず、自身の権限拡大に走る財務官僚べったりのメディアには、同業ながら怒りを禁じえない。

 「アベノミクス」の考え方に沿う黒田東彦(はるひこ)日銀総裁体制がスタートし、「大胆な金融緩和」を実行するだろうから、脱デフレと景気回復の道筋ができるはず。だから予定通り消費増税しても大丈夫だという声が自民党内からも聞こえるが、安易すぎるのではないか。

 消費増税でつい最近、大失敗した前例がある。英国は2011年1月から付加価値税(消費税に相当)率17・5%を20%に引き上げた。すると、08年9月のリーマン・ショック後の不況から立ち直りかけていた景気がたちまち悪化し、実質経済成長率はゼロ%台まで落ち込んだ。中央銀行であるイングランド銀行(BOE)は急遽、お札を継続的に大量発行する量的緩和(QE)政策を再開し、資産をリーマン前に比べて4倍以上、しかも同じQE政策をとっている米国を上回る速度で増やしている。

 グラフは実質経済成長率とQEの推移を追っているが、付加価値増税まではイングランド銀行資産の増加の効き目が出て、成長率が上昇していた。ところが、付加価値税増税実施後は、効力が薄れ、BOEがいくらお札を刷って資産を積み増しても成長率は下がる一方なのである。

 日本も英国も家計消費が国内総生産(GDP)の約6割を占める。英国は12年夏のロンドン五輪で消費景気の拡大が期待されたが、見事に空振りに終わった。

 日本の場合、1997年度に消費税率を3%から5%に引き上げたあと景気が急激に落ち込み、98年度から慢性デフレ局面にはまってしまった。増税前の駆け込み消費で需要を先食いする結果、増税後は消費が細る。そこにアジア通貨危機という外需の縮小が重なった。

 英国もギリシャ、イタリアなどユーロ圏の政府債務危機の余波が消費増税に伴う需要減にのしかかった。英国の輸出はGDPの約3割を占め、日本の同14%より高水準である。輸出競争力挽回のためにもQEによって通貨ポンドを押し下げようとしているが、ドルやユーロ札も刷られるので、さほど下がらない。

 日本も黒田日銀が無制限の量的緩和を検討中だが、市場はそれを折り込んで円は下げ止まる傾向が見え始めている。安倍晋三首相は英国を教訓に、消費増税実施時期を再検討すべきではないか。
(産経新聞特別記者・田村秀男)


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