【「お金」は知っている】 カネ余りでもGDP大幅減 壊れた循環メカニズムを修復せよ

カネ余りでもGDP大幅減 壊れた循環メカニズムを修復せよ
ZAKZAK2013.06.28
連載:「お金」は知っている

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20130628/ecn1306280711000-n1.htm

画像

カネの在庫が膨らんで、生産が萎縮する日本

 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は資産買い入れ規模を徐々に縮小させる方針を明らかにした。米金融政策の方向性が固まるのだから、前にも増して日本の「アベノミクス」の真価が問われる。そこで改めて気になるのは「三本の矢」で、ばらばらに撃たれるようでは、威力は長続きしない。

 講義めいて恐縮だが、筆者の解釈では、現代の市場経済というものはフローとストックに分かれる。前者は実体経済活動で、国内総生産(GDP)に代表される。ストックとは金融資産のことだ。民間主導の現代経済は、金融資産市場を活発化させ、そこからあふれ出るマネーがモノやサービス、労働の市場に流れ込んで景気を拡大させるという循環で成り立つのだが、日本はこの循環メカニズムが壊れている。カネの資産が有り余っている点では「豊か」なのだが、われわれの所得の素となる生産は細る、つまり実際の生活は貧しくなっているのである。

 そんなバカなことがあるか、と思われる方にはグラフを見てもらおう。慢性デフレが始まった1998~2012年度までの日本の家計金融資産はリーマン・ショック後の落ち込みを除けば、デフレとは無関係に拡大を続け、今年3月末には15年前に比べて284兆円増えたが、名目GDPは47兆円減った。

 中でも現預金はリーマンの影響が軽微で一貫して膨張を続け、154兆円増えた。企業部門もこの間に現預金を56兆円増やした。

 GDPと家計や企業の金融資産の推移を比べると、全く逆の方向を向いている。家計も企業も入ってくる収入を消費や設備投資に振り向けずに、現預金をため込んできただけである。これがデフレの原因であると同時に結果である。

 同じ比較を米国のGDPと金融資産でみると、見事なまでに並行して共に増え続けている。この米国の姿こそが正常な市場経済というもので、バーナンキ議長は3度にわたる量的緩和(QE)政策で金融資産市場をてこ入れしてきた。景気回復につなげられるとの自信があるからだ。

 が、その米国でも、実物需要や雇用を押し上げるのに手間取っているのである。慢性デフレでフロー・ストックが分解してしまった日本で米国と同じ金融手法をとるだけでは、成果を挙げられそうにないのだ。

 壊れたフローとストックの接続チャンネルをどう修復するか。金融緩和を通じて円安・株高傾向を長期持続させるのは前提条件だが、カネが実体経済にあふれ出なければ意味がない。そこで民間の役割が重大になる。企業は高株価を利用して低コストの長期資金を確保し、実物投資を増やす。新興ビジネスの新規株式上場を促す。銀行は集まる預金を企業向けや住宅関連融資に振り向ける。

 政府の方ではまず、企業の設備投資を国内に誘引する思い切った法人減税が欠かせない。戦略特区も金融資産市場からあふれ出てくる資金の受け皿にすべきだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)


この記事へのコメント

この記事へのトラックバック