【検証 株式市場】 [FT]ヘッジファンド、日本企業への攻めに学習効果

[FT]ヘッジファンド、日本企業への攻めに学習効果
日本経済新聞2013/6/4 7:00

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM03050_T00C13A6000000/?dg=1

(2013年6月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 今月、東京のホテルで開催を予定する日本たばこ産業(JT)の株主総会では、英大手ヘッジファンドのチルドレンズ・インベストメント・ファンド(TCI)から出される4件の提案が多数決にかけられる。昨年同様、おそらくすべてが否決される見通しだ。

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株価を表示する電光掲示板。日本の変調でも外国人による日本株の保有残高は前年末比27%増の83兆5560億円となった(5月24日)=ロイター

 否決されても、TCIは気にしない。TCIは英国を拠点とする投資グループで、似たような株主提案を来年の年次総会でも発議するとみられる。狙いは株主への増配だ。

 提案→否決の繰り返しも作戦の一部だとTCIは言う。TCIのキャンペーンで、売上高が世界第3位のたばこメーカーであるJTの株価は上昇。TCIが2年前にJTの発行株式の約1%を取得したことを公表して以来、120%以上、上昇した。JTの株価パフォーマンスは、同時期の市場全体の動向に比べ3倍以上だった。

 この間、JTも様々な対策を打ち出してきた。2500億円分の株式を買い戻す一方、配当性向を純利益の30%から50%に引き上げる計画を提案している。

 「JTが打ち出す積極的な変化がすべて我々のキャンペーンによるものだとは言わないが、純利益に明確な目標を定めたことや、配当の増加、その他の経営事項に関するより幅広い討議がなされたことは、我々の功績だと思っている」。TCIパートナーのオスカー・フェルドハウゼン氏は語る。

 JTの見方は異なる。TCIの提案はJTの基本路線には「ほとんど影響を及ぼしていない」と広報担当者は言い、配当性向は近年、順調に上昇する傾向にあるという。

 両者の見方が一致しているのは、JTとTCIは四半期ごとに会合の場を設けており、関係は良好だという点だ。こうした企業と株主の良好な関係は「もの言う株主」への新しい対応策として重要な点だと専門家は指摘する。株式市場の規模が世界第2位の日本では、日本人以外の投資家による株式保有が一連の「アベノミクス」経済政策下で最高の28%に上昇している。

 年初から800億ドルにのぼる海外資金の流入により、日本企業のあり方にも影響が出始めている。「海外からの投資で株価が上昇するにつれ、日本企業の経営者たちは受け身的に見ていてはいけないと気づき始めた。海外投資家が期待する株主利益は異なるからだ」。こう指摘するのは、東京のみずほ証券チーフ株式ストラテジストの菊地正俊氏だ。

 例えばJTでは、株主全体に占める海外投資家の割合は33.5%と最大勢力で、33.4%を保有する日本政府や33.1%を保有する国内投資家(自社株も含む)を上回る。

 次第に「日本企業の経営陣に圧力を加えるには、ドアを閉ざして直接対話するほうが得策だと海外投資家は気づき始めている」と、一橋大学准教授で政府の企業ガバナンスに関するワーキンググループの座長でもある加賀谷哲之氏はみる。

 「公の場の直接対決を通して建設的なコミュニケーションを形成することは投資家にとって困難になりうる」と言う加賀谷氏は、2003年から08年に起こった、前回の海外投資家による日本株式投資への高まりを示唆した。そのころ、米スティール・パートナーズや米大手ヘッジファンド、ペリーキャピタルが日本企業の経営陣を困惑させるやり方で動かそうと執拗に努力したものの、ほとんどが期待はずれのうちに終わった。

 仏の資産運用大手アムンディは、キャッシュを潤沢に抱える企業からの増配に照準を合わせたチームを東京に置いている。同社の投資責任者は「我々は経済の合理性に基づいて、企業に対話に参加してくれるよう働きかけている。攻撃的な姿勢ではうまくいかない」という。

 他社も追随しているようだ。先月、米有力ヘッジファンドのサード・ポイントのダニエル・ローブ最高経営責任者(CEO)がソニーに映画や音楽などの事業の分離を提案した際、ローブ氏は直接手紙を手渡して、交渉した。その中でローブ氏は、潤沢な資金をもってエンターテインメント事業の株式公開を支援する用意があることを強調した。

 海外投資家には、日本企業はまだキャッシュを抱え込みすぎているようにみえる。東証株価指数(TOPIX)500銘柄の構成企業のうち金融を除く企業が抱えるキャッシュの総額は、平均して時価総額の6分の1に相当する。米株式市場の業種別S&P500種株価指数の企業では、16分の1にすぎない。

 米国の平均配当性向は総利益の45%だが、これに対して、日本は30%しかない。

 増配につながるなら誰が主導しようとも歓迎だとするのは、アバディーン投信投資顧問の投資責任者、Kwok Chern-Yeh氏だ。同社は最近、JT株の比率を0.14%に引き上げた。

 「TCIがしかけようが、経営陣が動こうが、配当性向への注目が集まることは正しい方向に踏み出したということだ」

(c) The Financial Times Limited 2013. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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