【高橋洋一 「日本」の解き方】消費増税より「歳入庁」を優先せよ サラリーマンに負担強いる社会保障改革

消費増税より「歳入庁」を優先せよ サラリーマンに負担強いる社会保障改革
ZAKZAK2013.08.02
連載:「日本」の解き方



 社会保障制度改革国民会議は、2012年6月の民主、自民、公明の3党合意に基づいて衆議院解散後の同年11月末に設置され、今年の8月21日が設置期限となっている。

 国民会議の報告書は8月上旬に安倍晋三首相に提出される。政府は改革の骨子を取りまとめ、8月21日までに閣議決定され、関連法案は秋の臨時国会にも提出される予定だ。

 この会議が話題になることはまずないが、月2~3回のペースで審議されており、7月29日まで18回開催されている。議論の内容は、来年4月からの消費税引き上げに伴う財源の使いみちだ。

 民主党政権下で決められた消費税率引き上げ分のうち1%相当(2・7兆円)については、社会保障の充実に充てるとされている。2・7兆円のうち年金0・6兆円、子育て支援0・7兆円、医療・介護1・2兆円だ。

 報道によれば、報告書は子育て世代などの「現役世代の支援に軸足を移す」など、社会保障政策を「高齢期集中型」から「全世代対応型」に切り替えるとされている。負担原則は「年齢別」から「経済力別」へ転換されるようだ。

 「全世代対応型」や負担の「経済力別」というコンセプトはいいだろう。ただし、問題はその中身だ。例えば、負担の「経済力別」では、サラリーマンの負担によって、市町村の運営する国民健康保険(国保)の赤字を穴埋めする方針だ。

 サラリーマンは、自営業者などに比べて、税・社会保険料の捕捉率はかなり高い。そうした捕捉が容易なところからさらに取ろうとするのだろうか。

 本コラムでたびたび指摘してきたように、税と社会保険料の徴収を一体化する「歳入庁」ができていないことから、税・社会保険料で年間10兆円以上の取りっぱぐれがあるという試算もある。民主党の政権獲得前の公約には歳入庁構想があったが、政権を取るとトーンダウンし、最後には断念してしまった。その一方で、政権前の公約になかった「消費増税」をやってしまった。

 不公平是正の切り札である「歳入庁」をやめて、逆進性が高く低所得者層に打撃のある「消費税」で、歳入増を図ろうとしてしまったのだ。

 報告書には「社会保障・税番号制度も活用し、資産を含め負担能力に応じて負担する仕組みとしていくべき」とも記されているようだ。であれば、なおさら「歳入庁」が必要不可欠だ。社会保障・税番号制度は「歳入庁」という社会保障・税の一体徴収機関がないと画竜点睛(てんせい)を欠くからだ。

 財務省は、消費増税しないと社会保障改革はできないと脅すのだろう。消費増税のかわりに「歳入庁」を作れば、不公平をなくし、負担の「経済力別」はスッキリ解決できる。「歳入庁」は、国税権力を手放したくない財務省の省益に反するので、民主党政権は取り下げた。官僚の省益のためでなく、国民のためになるしっかりした社会保障制度を作るのであれば、消費増税より「歳入庁」が優先だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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