【「日本」の解き方】 日銀総裁の「面従腹背」で失われた莫大な国富 求められる日銀法改正

日銀総裁の「面従腹背」で失われた莫大な国富 求められる日銀法改正
ZAKZAK2013.08.07
連載:「日本」の解き方



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日本銀行本店=東京都中央区

 日銀の2003年1~6月の金融政策決定会合議事録がこのほど公開された。この議事録は筆者にとって個人的にも興味深いものだった。

 筆者は当時、米プリンストン大学から帰国後で、国土交通省に出向し、竹中平蔵経済財政相の手伝いを時々していた。そこで、あまりに日本での金融政策の理解が不十分だったので、岩田規久男学習院大教授(現日銀副総裁)らと「まずデフレをとめよ」(日本経済新聞社)を出版した。

 この本は10年前に書かれたものだが、今読んでもまったく色あせていないので、今年3月に復刻された。筆者は第6章を担当したが、そこで書かれていることは、マネタリーベース(中央銀行が供給する通貨)を増やして予想(期待)インフレ率を高めて、実質金利を下げ、デフレから脱却するということだ。それがIS-LM分析という古典的な経済学の手法で書かれている。

 当時、日銀で福井俊彦総裁が誕生した経緯について、福井総裁は小泉純一郎首相にデフレ脱却を約束して総裁になったと聞いていた。岩田一政副総裁は竹中氏がデフレ脱却のために送り込んだとも聞いた。武藤敏郎副総裁には「まずデフレをとめよ」を贈ったこともある。議事録をみると、それらの人たちがどのように議論を行ったのかがわかる。

 岩田一政副総裁は、就任した直後の03年3月25日の臨時会合で、「ゴール・ターゲティング・ポリシー」という言い方ながらインフレ目標の導入を主張している。それに対して、福井総裁は「トランスミッション(信用創造)・メカニズムを欠いたままこれ(インフレ目標)を、ある期限を明示したゴールだと意識してしまうと、達成の自信が持てない」「期待に働きかけることについては、私共は期待をコントロールすることができないのではないか」と疑問を呈している。武藤副総裁も、よくわからないといいながら「波及メカニズムというものをもう少し腰を据えて議論してみたらどうか」と福井総裁に同調している。

 福井総裁が「名目金利を抑えながら期待インフレ率を上げることは、現実問題として可能か、疑問がある。私共実務家としての理解では、期待インフレ率が上がれば名目金利が上がる」と述べたのに対し、岩田一政副総裁は説得的な議論ができなかった。

 この1年後ぐらいに、筆者は竹中氏に、マネタリーベースを増やすと半年後に予想インフレ率が増えるというデータを渡し、それは日銀にも渡った。また、「まずデフレをとめよ」には、景気の低迷期では予想インフレ率ほど名目金利が上がらないことも書いてある。

 結局、福井総裁はデフレ脱却を政治家に約束しながら、その裏ではインフレ目標導入をストップさせるという面従腹背だった。10年遅れのインフレ目標で逸失した国富は莫大だ。

 いまの日銀は黒田東彦総裁体制でよくやっているが、それでも日銀法改正をしてインフレ目標を制度化しておかなければ、再び金融政策が逆戻りする恐れがあるというのが、今回の決定会合議事録の教訓だろう。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)






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