消費税増税の前に政府が抱える巨額な金融資産と天下り先特殊法人を処分すべだ

消費税増税の前に政府が抱える巨額な金融資産と天下り先特殊法人を処分すべきだ
財務省にとって不都合な真実

現代ビジネス2013年08月19日(月) 高橋 洋一

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/36752


 参院選後の世論調査で、消費税増税に58%が反対している。消費税増税について、昨年12月の衆院選でも、今回の参院選でも、直接国民に信を問うていないが、間接的には反対だろう、消費税増税へ道筋をつけた民主党は、衆院選、参院選それぞれで惨敗している。

 消費税増税について、「増税しないと国債暴落になる」、「増税を先送りすると株価が下がる」、「増税しないと国際公約違反になる」、「増税しないと社会保障ができなくなる」、「増税しないと財政再建できない」とかいう意見については、8月5日付け本コラムなどでウソであると書いてきた。

財務省にとって不都合な国のバランスシート

 それでも、財務省は必死に「国の借金が酷い」と増税を訴えてくる。「日本には1000兆円の借金がある。国民一人当たりに換算すると800万円にもなる」、「債務残高GDP比200%は、世界一だ」――こんな話をメディアを通して聞いたことがある読者も多いだろう。

 国の借金が初めて1000兆円を超えたと報道された。財務省が8月9日「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」の数字が1008兆6281億円と発表したからだ。

 しかし、なぜ、国のバランスシート(B/S)を見ないのか。それをみると、負債合計は国の借金を包括的に表しており、それが「国の借金」にふさわしい数字だ。国のB/Sは毎年公表されている。2011年6月28日に公表された「平成21年度国の財務書類」では、2010年3月末現在の負債総額は1019兆173億円となっている。この時点ですでに負債は1000兆円を超していたのだ。

 その時には報道されずに、国の負債の一部にすぎない「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」がいまになって大々的に報じられるのは、財務省がレクしないと書かないマスコミの不勉強さゆえだ。

 それでは、どうして財務省はレクをしないのか。「国の財務書類」のB/Sには、財務省にとって不都合な事実が書かれているからだ。2012年3月末現在のバランスシートでは、負債総額は1088兆円、資産総額は629兆円だ。

 実は、国のB/Sを財務省ではじめて作成したのは筆者だ。借金が大きいと主張し財政再建の重要性をいってきた主計局では、資産総額が明らかになることに反対だ。筆者が国のB/Sを作ってから、政府として公表されるまでに10年程度の時間を要した。 

 IMF(国際通貨基金)などの国際機関では、国の負債の大きさを見る時に、資産を引いたネット債務でみるのが普通だ。資産を無視して負債だけを見るのは適切でない。

 ちなみに、459兆円の負債超過だったとしても、日本のような先進国の場合、成長するならさほど問題ではない。なぜならば、政府には国民に税金を課す課税権と税金を取る徴税権があるからだ。

先進国でもダントツな日本政府の金融資産

 しかも、日本の場合、資産の中身が問題だ。資産総額629兆円のうち428兆円が金融資産だ。その内訳は、現預金18兆円、有価証券98兆円、貸付金143兆円、運用寄託金111兆円、出資金59兆円となる。

 運用寄託金は年金資産だからまだいいとしても、有価証券は外為資産、貸付金と出資金はいわゆる特殊法人等への資金提供だ。変動相場制の国では、これほど大きな外為資金を持たない。また、いわゆる特殊法人等は官僚の天下り先として問題になっており、先進国でこれほど広範な政府の子会社を持っている国もない。日本の金融資産の大きさは先進国でダントツである。


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 1000兆円の負債を抱えていると、金利上昇した時の利払費が大変になるという。その時には、名目経済成長率が高くなっているはずで税収が増えている。だから、経済成長して財政が悪化するはずない。

 税収弾性値1.1でいいと、経済学者など財務省のポチがいうのは滑稽である。この弾性値は、予算上のテクニックで要求官庁を抑えるために用いられてきた経緯も財務省に教えてもらったらいい。

 実際、直近の10年間の税制改正なしの税収弾性値は3.13である。この税収弾性値やプライマリー収支が1年前の名目経済成長率でほとんど決まってくることは、5月20日付け本コラムで書いたので参考にしていただきたい。

 なお、同コラムで使ったプライマリー収支対GDP比と1年前の名目経済成長率との相関を示したが、そこに書かれた関係式から名目経済成長率5.5%でプライマリー収支はゼロになる。しかし、歳入庁を作ればGDP比2%以上の歳入増になるので、名目成長率は4%もあれば、財政再建は達成出来る。

財政危機ならば国の資産を処分するのは当たり前

 しかし、それらを横に置いても、巨額な資産を処分して負債圧縮すればいい。そのような資産処分を指摘すると、役人たちは、「それらの資産は年金資産や土地、道路で売れないものだ」と反論してくる。しかし、これらは金融資産のうちの運用寄託金111兆円と固定資産191兆円の一部の話だ。

 いずれにしても、貸付金と出資金はいわゆる特殊法人等を民営化すれば処分できる。日本では天下り先確保のために民営化は頓挫している。その一方で、財政危機と煽りながら、資産の処分を回避し増税を進めている。

 このままでは国民を苦しめる一方で、官僚は天下り先を確保することになってしまう。国の資産処分は財政危機に陥った国ならどこでもやっている。それをやらないというのは、財政危機とはいえないのだろう。

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