【「日本」の解き方】 財務省の動きを冷静に見る黒田日銀総裁 財政健全化論の無邪気な前提

財務省の動きを冷静に見る黒田日銀総裁 財政健全化論の無邪気な前提
ZAKZAK2013.08.20
連載:「日本」の解き方

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130820/dms1308200729003-n1.htm



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黒田日銀総裁

 黒田東彦(はるひこ)日銀総裁は8日の政策決定会合後の記者会見で、「脱デフレと消費増税は両立する」と述べた。この発言は、市場関係者間では、来春に予定されている消費税増税について前向きと受け止められた。

 市場関係者間の解釈は以下の通りだ。黒田総裁はこれまで財政健全化を強調してきた。消費税増税が来年4月から予定通りに行われないと、財政健全化に暗雲が広がり、長期金利が上昇する。その場合、日銀が今行っている国債の買い入れが「財政ファイナンス」とみなされることも長期金利の上昇になるという。このため、黒田総裁はとうとう消費税増税に前向きの発言に踏み込んだ、政府内でくすぶっている消費税増税への消極論にクギを刺した-というものだ。

 こうしたステレオタイプの市場関係者の見方には、致命的な欠陥がある。それは、増税が財政健全化になるという無邪気な前提だ。増税は経済を停滞させ、歳入増にはつながらない。そのため、増税は財政健全化につながらないことが多い。こうした一般論に加えて、今回の消費税増税は、社会保障充実のためといっている以上、財政健全化にならないのは当たり前だ。しかも、今回の消費税増税については、先般の衆院選と参院選で大量に当選した自民党議員が政権交代に際して、大幅な政府支出を要求してくるのが必定だ。このため、今回の消費税増税では財政健全化にならないのだ。

 このような事情は、財務省出身の黒田総裁であれば、百も承知のはずだ。これは、逆にいえば、消費税増税をしても、そのまま財政支出になるのだから、景気の落ち込みはないともいえる。

 これは、日銀が示した実質経済見通しをみてもわかる。日銀は、2014年4月から消費税を増税しても、13年度に2・8%の実質経済成長率は、14年度も1・3%であるとしている。例えば、民間シンクタンクの平均は、13年度2・8%と同じであるが、14年度0・6%と日銀よりかなり低く見込んでいる。

 13年度が2・8%なのは、2%程度の伸びに消費税増税の駆け込み需要を0・7%とみているからだ。14年度について、民間シンクタンクでは、駆け込み需要の反動減で1・4%程度になって、さらに消費増税の反動で0・6%までさらに落ち込むとみているのだ。

 一方、日銀は、同様に駆け込み需要の反動減で1・4%程度になるが、消費増税による実体経済の落ち込みがあっても政府支出増がそれを挽回して、結局、1・3%になるとしている。要するに、消費税増税があっても、消費税増税の景気落ち込みをなくすために政府支出があるはずなので、増税が先送りされても、どちらでも変わりないというのだ。

 であるから、黒田総裁は、消費税増税に前向きかどうかは関係なく、財務省の動きを冷静に見ているだけだ。ただ、今回の消費税増税では財政健全化にならないわけだから、そこはしっかりやってくれと言っている。 

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)





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