【「日本」の解き方】 法人税減税報道のウラを読む 時期尚早で財務省が火消し?

法人税減税報道のウラを読む 時期尚早で財務省が火消し?
ZAKZAK2013.08.21
連載:「日本」の解き方


 13日付の日本経済新聞朝刊1面で、安倍晋三首相が法人税の実効税率引き下げを検討するよう関係府省に指示したと報じられた。ところが、15日の記者会見で菅義偉官房長官や麻生太郎財務相は、これを明確に否定した。

 お盆のこの時期には、ニュースも夏枯れになる。こうした時には、ささいな話も大きな扱いになるのだろう。もっとも、記者の創作ではなく、誰かが話をしたに違いない。こうした記事の出所は官僚であることが多い。しかも、各省課長レベルではなく、官邸やその周辺の可能性が高い。本稿では、いろいろと推測してみよう。もちろん真相はヤブの中であるが、暑中、いい頭の体操になる。

 法人税減税は、政治的には消費税増税とのセットで議論されてきた。もちろん、法人税減税と消費税増税は、所得の家計から企業への移転になり、消費抑制と投資増加を意図するものであり、経済的には問題なしとしない。

 しかし、単純な財源論から、法人税減税と消費税増税がセットで議論されてきたのは事実だ。というのは、財務省は消費税増税の支持を財界からも取り付けるために、裏では法人税減税を示唆した。財界にとっても、日本の法人税率が国際的にも高いことを理由として、社会保障財源で企業も負担増になる社会保険料の引き上げよりも消費税増税の方がましで、法人税減税とのバーターなら得策だ。

 そこで、まず消費税増税について整理しておくと、これまでの本コラムで指摘したように、官僚による作成と思われる公式文書はみな増税が前提になっている。消費税増税は官僚の世界では既に決着済みだ。もっとも、政治的には今後のパワーがどこにあるかを示す格好のチャンスであり、政治的な力の見せ所だ。特に官僚が決めたことをひっくり返せば、政治主導になるし、それでなければ政治家の意味はない。

 増税は、実際の経済にマイナス影響になるが、予算枠は広がるわけで、官僚にとっては予算ぶんどりの好機になる。実際、消費税増税が決まると、景気への落ち込みを理由として補正予算などの動きが活発になる。予算は歳出増だけでなく減税(租税歳出)も含まれる。経済界からは法人税減税の話も出てくるはずだ。

 当然、財務省もある程度の歳出増は、消費税増税のために織り込み済みだ。減税も投資減税までなら財務省も許容範囲だ。しかし、法人税減までは表では言えない。

 こうした背景がわかっていれば、法人税減税の報道記事の出所は、経済官僚からの可能性が高いことがわかるだろう。恐らく中期的には、法人税減税も政権の検討課題なのだろう。しかし、今のタイミングで出ているのは時期尚早なので、財務省が火消しに回ったのだろう。

 もっとも、これによって消費税増税が既定路線となり、その落ち込み対策へ世論が動けば、財務省としても満足であろう。特に、対策が減税ではなく予算支出に移っていけば万々歳だ。

 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)





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