浜ホト技術に再び光 ノーベル物理学賞  (中日新聞2013年10月9日)

【静岡】
浜ホト技術に再び光 ノーベル物理学賞
中日新聞2013年10月9日

http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20131009/CK2013100902000091.html


◆天文学的数字の世界捉える


画像


 八日発表された二〇一三年のノーベル物理学賞で、質量の起源とされ「神の粒子」とも呼ばれるヒッグス粒子を捉えた検出器のセンサーは、光技術メーカーの浜松ホトニクス(浜ホト、浜松市中区)が技術を結集した製品だった。小柴昌俊・東京大特別栄誉教授による素粒子ニュートリノ発見の物理学賞(二〇〇二年)に続き、浜松発のものづくり技術が受賞を陰で支えた。


 スイスにある欧州合同原子核研究所(CERN)の円筒形の検出器「ATLAS(アトラス)」に、鏡のような光沢を放つセンサーが約一万五千枚、びっしりと並ぶ。十センチ四方の半導体素子に数十マイクロメートル(マイクロは百万分の一)間隔で筋を刻んだ「シリコン・ストリップ・ディテクター(SSD)」。素粒子が通過した位置を数十マイクロメートルの精度で特定する重要な部品だ。


 受注が決まったのは一九九九年。中心になって開発してきた山本晃永専務(67)は「ほかに作れる企業がなく、浜ホトが選ばれた」と振り返る。


 同社の半導体の微細加工技術を総動員して開発したが、面積の大きい半導体を、ばらつきのないように生産するのは困難を極めた。山本専務は「試作品を納めてテストをすると『ダメ』。この繰り返しで、本当に使えるものができるのかと不安だった」と生みの苦しみを語る。


 一方で、研究者たちの並々ならぬ熱意も感じていた。「物理屋(物理学の研究者)は実験に人生を賭けている」。それに応えるよう血のにじむような試作を繰り返して、三年かけて完成させた。その後、別の検出器「CMS」にも約二万五千枚を納入した。


 CERNの正面玄関には「Hamamatsu」の名前が刻まれたプレートが飾られている。ほかの企業の名前はなく、同社の技術の貢献度の高さを象徴している。山本専務は「いくら利益を出している事業でも、学術的な貢献がないと認められない社内の雰囲気がある」と語り、CERNでの成果に手応えを示した。


画像



 ヒッグス粒子の検出器はどんな働きをするのか。欧州合同原子核研究所(CERN)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)と呼ばれる実験装置では、円周約二十七キロの加速器で陽子同士を衝突させて一京度(京は十の十六乗)の高温を生み出す。宇宙のビッグバン直後のエネルギーを再現して、ヒッグス粒子を発生させる。


 実験で一秒に十億回の衝突を起こすがヒッグス粒子が飛び出すのは一兆回のうち一回。さらに、ヒッグス粒子は一瞬(十のマイナス二十一乗秒)で崩壊して別の素粒子になる。この素粒子が通過した位置や、エネルギー量を解析して、崩壊する前のヒッグス粒子の存在を突き止める。その時に活躍するのが浜松ホトニクスのセンサーだ。


 光半導体センサー「シリコン・ストリップ・ディテクター(SSD)」は陽子の衝突点を囲むように円筒状に並び、粒子の飛跡を厳密に測定する。さらに、素粒子を捉えて電気信号に変換するセンサー「光電子増倍管」も同社が作った。この信号を解析することで、素粒子のエネルギー量を測定する仕組みだ。

(白山泉)


 <浜松ホトニクス> 1953(昭和28)年、「浜松テレビ」として浜松市で創業。83年、浜松ホトニクスに社名変更した。光子(フォトン)の産業への応用を目指して、技術開発に取り組む意味を込めて名付けた。

 主力製品の光電子増倍管は、光を電子に変換して増幅する光センサー。血液検査装置や環境計測機器、人工衛星、油田探査装置などに使われている。2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊・東大特別栄誉教授が、素粒子ニュートリノの検出に浜ホトの光電子増倍管を使ったことで一躍有名になった。

◆「ヒッグス粒子、新たな産業を」 浜ホト・晝馬社長

 ヒッグス粒子の検出を技術面で支えた浜松ホトニクスの晝馬(ひるま)明社長(56)は八日夜、「電子が発見された一八九七年ごろ、それを応用する技術はなかった。近い将来、ヒッグス粒子を使った新しい技術、産業が生まれることを望みます」と、今後の技術の応用に期待した。


 浜松市中区の本社はほとんどの社員が帰路に就いており、九日午前に大塚治司副社長と開発を担当した山本晃永専務らが記者会見を開く。


 現在計画中の次世代の高エネルギー物理学実験にも開発依頼があるといい、晝馬社長は「当社の技術がどこまで要求に応えられるか、大きな期待と責任を感じている」とした。

◆浜松市民の誇り

 《鈴木康友浜松市長の話》 2002年に素粒子ニュートリノの観測で受賞した小柴昌俊東大特別栄誉教授への技術貢献に続き、浜松ホトニクスの光電子技術が今回もノーベル物理学賞に寄与したことは誠に喜ばしいことであり、浜松市民の誇り。無限の可能性を秘めた浜松発の技術が、世界のさまざまな分野で生かされることを期待する。

◆「予言」から50年 ようやく

 静岡大理学部の青山昭五教授(素粒子理論)の話 ヒッグス粒子は素粒子の標準理論が予言した粒子の中で最後に発見された粒子だった。ヒッグス氏らが存在を予言してから50年たっており、待ちに待った受賞と言える。ヒッグス粒子は標準理論の全ての要になっている。標準理論を乗り越え暗黒物質を含めた宇宙の成り立ちを解明する次の理論への道しるべにもなる。欧州合同原子核研究所(CERN)では、来年秋からこれまでの倍のエネルギーで実験が始まる予定で、成果が注目される。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック