「株価2万円超え」 我々はどう考えたらよいのか 浮かれてなんかいられない!

経済の死角
「株価2万円超え」 我々はどう考えたらよいのか  
浮かれてなんかいられない!
2015年 大特集日本経済の常識が大きく変わる「1ドル=160円」を覚悟せよ
現代ビジネス2015年01月01日(木) 週刊現代

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41524

'80年代のバブルより異常

私は金融マンとして30年近くマーケットを見てきましたが、現在のような異常な株式相場は見たことがありません。

象徴的だったのが、12・10ショックを契機とする日本株の暴落劇です。12月10日に日経平均株価が前日比で400円も暴落すると、翌日も一時300円以上株価を下げるなど騒動になり、このまま日本売りが止まらないのではと不安の声が上がりました。

暴落劇の要因は、ヘッジファンドを中心とする外国人の短期筋が利食いするために一旦、日本株を売ったことにありますが、それだけではありません。


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表は直近で日銀がいつ、どれだけのETF、REITを購入したかを示している

黒田東彦総裁率いる日本銀行は、異次元の金融緩和の名のもとに、ETF(上場投資信託)を購入することで株価を下支えしてきました(左表)。特に午前中の相場が大きく崩れると、その日に買いを発動するというのがこれまでの特徴でした。

しかし、12月10日は午前から大幅安だったにもかかわらず、買いを発動しなかった。これまで短期筋は日銀の買いを見越した投資をしてきたので、焦って売り急いだ側面があるわけです。

日銀が買いに入らなかったのは、日銀が目標としている年末時点でのETFの目標残高にすでに近づいているからと言われています。

そもそも中央銀行が株を購入して株価を支えるということ自体、世界では見られない異常事態です。そこへきていまの日本株市場は、日銀の動きを見ながらマーケットが動くという怪しい相場になっている。

'80年代後半の沸騰相場も異常な株価だと言われましたが、当時は企業が財テクに走り、銀行も一役買った。つまりは、民間が作ったバブル相場でした。それがいまは完全な官製相場なので、よりタチが悪い。株価が上がれば上がるほどに、その異常さを警告するアラームが鳴り響いているように、私には見えるのです。

山元博孝氏(69歳)。経済評論家。日本興業銀行(現・みずほ銀行)の金融法人部長や和光証券(現・みずほ証券)常務などを歴任。銀行マン時代から株式、債券、為替のマーケット業務を手掛け、ディーラーとしても活躍した。

まずはこれからの相場の見通しを話しましょう。

このほどの総選挙で自民党が圧勝したことで、株高を志向するアベノミクスの政策が強く推進されるという期待から、2015年は株価が一層上がる一年になるでしょう。

1月からさっそく株価は上昇を始め、2月には再び短期筋による利食いが入るため株価が上下するボックス相場に突入。一方で為替相場では円安が一段と進行して、ひとまず1ドル130円を目指す中で、輸出企業の増益期待から再び株価が上昇していく。4月は黒田総裁が'13年4月に最初にぶち上げた異次元緩和からちょうど2年を迎える時期。ここで株価は2万円に達し、「2年でここまで到達した」と安倍総理が胸を張る姿がメディアに映し出されるでしょう。もちろん4月の統一地方選は圧勝です。

経営者のための株高

その後、再び株価は調整局面に入り、1万8000円前後で推移するでしょうが、5月には大企業の決算発表ラッシュがあります。トヨタ、富士重工業などの自動車メーカーを中心に、「史上最高益」といった華やかな業績が飛び交うことになるでしょう。現在、日経平均の一株当たりの利益は1070円程度ですが、企業の増益発表を受けてこれが1200円程度まで上昇。PER(株価収益率)17倍という水準が割安と判断され、マーケットはPER20倍まで買い進もうという動きが顕著になる。日経平均PER20倍は株価にして2万4000円ですから、ここから年末にかけ2万5000円を目指して上昇する動きになるわけです。

来年の夏には安倍政権が財政再建シナリオを提示する予定で、これが空手形に終われば「日本売り」が始まるという声も聞こえますが、そのシナリオはないでしょう。消費増税を見送って財政再建に赤信号がともったと思われていますが、実は第三次安倍政権下においては'15年度の財政再建目標が達成される可能性が高いからです。

第一に、大企業が海外で上げた利益が円安によってかさ上げされることで、法人税収が予想を上回って増えることが考えられる。第二に、株高にともなうキャピタルゲイン税の増収が期待できます。というのも、東京証券取引所の時価総額約500兆円のうち、個人保有分は約100兆円。株価が2万円まで上がればそれが120兆円に膨らむ計算で、その20兆円の増加分の半分が利益確定売りされたと仮定しても、「10兆円×税率20%」で2兆円の税収となるからです。株価2万5000円で計算すると、税収は4兆円を超えてきて、消費税の追加引き上げ2%分の増収効果を国庫にもたらすのです。

株価が上がり、大企業は好業績、財政も問題なしとなればうれしい悲鳴が聞こえてきそうですが、多くの国民は浮かれてなんかはいられません。いくら株が上がっても生活はまったくよくならないからです。

いわゆる不況の株高ということですが、こうした現象が起きる背景には、日本企業の経営陣の行動が影響しているという点はあまり指摘されていません。

円安で利益が膨れ上がるのであれば、それを従業員の給与や国内景気のための設備投資に振り向けてもいいはずなのに、最近の経営陣は自社株買いと配当に回す傾向にある。なぜかといえば、企業役員は役員報酬としてストックオプション(決められた価格で自社株を購入する権利)というものを与えられており、株価が上がるほど受け取れる報酬が増える仕組みになっている。そのため、「まずは株価アップ」というのが優先されてしまうのです。

安倍総理が国民生活を置き去りにして内閣支持率と連動する株価を上げようとするように、従業員の生活よりも自身の報酬に直結する株高政策に前のめりになる経営者が増えているということ。そうした意味でも、この株高は異常なのです。

底が抜ける瞬間が来る

おのずとこの株高サイクルは、いつまでも終わりがないように続いていくという特色を帯びてきます。なぜなら、政府や大企業の経営陣が株高施策を打つとわかっているから投資家は株を買うわけで、誰かが株高施策を止めた時点でマーケットに見切られ、株を投げ売られる可能性が出てくる。だから、みなが一度始めたら最後、株高施策を続けざるを得なくなってしまう。

日銀が株購入だけでなく、不動産価格を釣り上げるためにREIT(不動産投資信託)を買っているのもそのためです。不動産価格が上がれば資産家が潤い、彼らが膨れた資産でまた株を買ってくれる可能性がある。それだけではなく、安倍政権は国民の年金資金も日本株に振り向けることを決めました。それも公務員の年金資金は安全な国債で運用しながら、国民の年金マネーだけをリスクにさらす方向に舵を切ったのです。誰もゲームを降りられない消耗戦のようなものです。

こうした株高によって、日経225銘柄に採用されている大企業や富裕層には恩恵がある状況が来年も続いていく。一部の大企業の社員は来年の春闘で2%程度のベースアップを勝ち取るでしょうし、手厚いボーナスも見込める。大企業の給料をベースにして決まる公務員給与も「値上げ」されるでしょう。しかし、多くの国民は株高の恩恵を受けず、物価高に家計が直撃されるだけで終わりです。不動産価格が上がるのは都心部だけで、地方はどんどん下がっていくので格差も拡大するばかりです。

安倍政権は政治を「市場化」してしまった。別の言い方をすれば政治家が本来すべき政策を捨てて、政治を株式マーケットに委ねるという大博打に走っている。総理自身もそのおかしさを理解しているでしょうが、アベノミクスの旗を降ろせず、この道を突き進んでいくしかなくなっています。

しかし、そんな株高は明らかにバブルであって、いつかバブルは終わるというのが歴史の必然です。

バブルの崩壊がいつかを正確に予想することは困難ですが、ヒントはあります。意外と思われるかもしれませんが、米国企業の業績がそれになると思います。

実は多くの米国の企業も、せっせと自社株買いを行っています。しかも、日本企業より悪質で、米国企業は借金をしてまで自社株買いを行っているところがある。つまり、米国の株価も作られたもので、日本と同様にバブルなわけです。さらに言えば、米国の株式市場が日本市場の映し鏡と言われているように、米国株高が日本の株価を引き上げている側面もある。

しかし、米国の景気が悪化し、企業の業績が落ちてくれば借金ができなくなる可能性が出てくる。その時、ヘッジファンドは一気に売りに転じるでしょう。

その瞬間、世界中の投資家が一斉にリスクオフ(売り)に入り、日本株からも歴史的な逃避を始める。見たこともないような暴落劇の始まりであり、それがこの異常な株バブルの底が抜ける時なのです。

米国の株式市場は個人投資家の割合が高いので、プロから見れば、海外投資家の売買シェアが7割を占める日本市場のほうが売り崩しやすい。崩れる時は、日本市場のほうが米国市場より、深い底に落ちていくことになるでしょう。

バブルというのは、弾けた時に初めて、「あれはバブルだった」と名づけられる。その瞬間まで、バブルは膨らみ続ける。その泡(バブル)が大きく膨らめば膨らむほどに、弾けた時の衝撃がとてつもないものになるということも忘れてはいけません。

「週刊現代」2014年12月27日号より

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