【わたしの投資論】 投資は人生のメーンじゃない(竹川美奈子)

投資は人生のメーンじゃない(竹川美奈子)
わたしの投資論
日本経済新聞2015/2/19 7:00

http://www.nikkei.com/money/features/67.aspx?g=DGXMZO8319735014022015000000

 ファイナンシャルプランナー(FP)の竹川美奈子氏を投資に駆り立てたのは、強烈な危機感だった。「投資信託にだまされるな!」などの著書がある竹川氏に、資産形成のための心構えを聞いた。

■年金を試算、少なさにがくぜん

 本格的に投資を始めたのは、FPとして独立しようと決めてからです。厚生年金から外れて国民年金だけになると、将来もらえるのはいくらくらいかなと思って試算してみたら、あまりの少なさにがくぜん。預金だけじゃ足りない、長期的な資産形成が必要だと思い知らされたんです。

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竹川美奈子(たけかわ・みなこ)氏 埼玉県出身。出版社などを経て2000年、FPの資格を取得。LIFE MAP,LLC代表。個人投資家の交流会「コツコツ投資家がコツコツ集まる夕べ(東京)」の幹事も務める

 水泳の本をいくら読んでも泳げるようにならないのと一緒で、投資もやってみないと分からないものです。たとえば、リスクの大きさは事前に計算できますが、実際に損をするとなかなか冷静ではいられなくなります。最初は私も、数十万円の含み損を見るだけで「1カ月分の稼ぎがなくなっちゃった……」とずいぶん動揺しました。どこまでリスクを取れるかは、経済的に耐えられるかだけじゃなくて、精神的に耐えられるかどうかも重要なポイントです。そういう意味では、リスクは「何%」よりも「何円」で考えた方がいいと思います。

 マネー誌で記事を書いていたこともあっていろんな金融商品に挑戦しましたが、中国株では怖い思いをしました。大型株で始めたものの、そのあとつい調子に乗って小型株も手を出したんです。ところが粉飾決算が発覚して取引停止。2年近くたってようやく手放せたときには半値くらいになっていました。投資額が数万円だったからまだよかったですが、その10倍、100倍も買っていたらと思うとぞっとします。外国株は、自分で財務内容まで検討するのは難しいと痛感しました。

 投資できっちり利益を出そうと思ったら手間も時間もかかります。でも、仕事も家庭生活も趣味も、人生でやらなきゃいけないことはたくさんありますよね。銘柄を証券コードで呼んで「次はあれが来るよね」みたいな話をするのもそれはそれで楽しかったですけれど、投資って決して人生のメーンではないんですよ。あくまで幸せになったり楽しく暮らしたりするための手段ですから。

■手薄だった「ど真ん中の王道」

 それを考えると、資産形成の王道は低コストの投資信託を組み合わせた国際分散投資だと思います。投信は小口の資金を集めて専門家が運用するので、初心者でも少額から分散投資ができます。積み立てという方法を利用すれば、あとは淡々と続けるだけです。ところが2000年代半ばの投信のトレンドは、分配金を重視するタイプと短期で値上がりを狙うタイプに二極化していました。ど真ん中の、長期分散投資に向いているものが手薄になっていたんです。

 07年に書いた「投資信託にだまされるな!」には、そうした問題意識が反映されています。こんなタイトルですし、「買ってはいけない投信」の広告例をたくさん挙げたので「アンチ投信本」だと思われることもありますが、むしろ逆です。投信の正しい使い方を知って活用してほしいという思いを込めました。

 この本は改訂版も含めて大きな反響がありました。なかでも印象に残っているのは、銀行の若い販売員の方から届いたメールです。「これまで自分が売ってきたのは、本で『買ってはいけない』とされているものばかり。こんな仕事はやめたい」と。投信をよくしていくには、作り手、売り手、買い手がみんな変わらないといけません。売り手の現場からも、こういう商品を入れましょうとか、それが無理でも資産配分の提案を工夫するとか、声を上げていくことが欠かせません。やめないで、ぜひできることから取り組んでくださいとお伝えしたところ、「がんばります」とお返事をいただけました。

 その後、投信を巡る環境は少しずつ変わってきています。低コストのインデックス型(市場平均に近い収益率をめざす)投信が増え、500円や1000円といった少額から積み立てができるようになりました。インターネット証券でも品ぞろえが充実してきて、現役世代も気軽に買いやすくなっていると思います。投資は仕事をしながら運用期間を長く取れる若い世代ほどリスクを取ることができます。退職金で慌てて始めるのではなくて、若いうちから少しずつ慣れておくことが大切です。失敗しても少額なら大やけどしないし、次に生かせますしね。

 私も06年のライブドア・ショックでは大変な思いをしましたが、その経験のおかげで、リーマン・ショックでは「お金があればもっと買えるのに」と思えるくらいになっていました。大きな波というのは人生のうちに何度か来るものです。一度乗り損ねても、次できちんと乗れればいいんです。積み立ては何よりこつこつ続けることが欠かせません。長い目で見ると、価格が急落してもひるまなかった人は資産が大きく増えて、怖くなってやめてしまった人とは大きな差がつきます。

 個人的に気をつけているのは、手元にある程度現金や預金を残しておくことです。私も経験がありますが、キャッシュが必要になる場面というのは、往々にして景気が悪いときにやってきます。資産のほとんどを投資に回していると、相当値下がりしているときに換金することになってもったいないからです。現物の不動産も、すぐに換金できないという理由で投資対象としては持っていません。

■お金の使い方で社会は変わる

 投資は第一に資産形成の手段なので、合理的に考えれば、低コストのインデックス型投信や上場投資信託(ETF)を組み合わせた運用に徹すればよいでしょう。私も大部分はそうした運用をしていますし、多くの人はそれで十分だと思います。ただ一方で、市場全体にまんべんなく投資するインデックス型投信を買うと、応援したい企業にも、そうでない企業にも同じようにお金が行くという難点があります。

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投資を短期売買でもうけるものから「育てる」ものにしていきたいという

 世の中を思い描く未来へ近づけるために私たちができることは、投票に行くか、お金の使い方を変えるかです。私は自分のお金の行き先をできるだけ意識したいと思っていて、商品やサービス、経営者の理念に共感できる企業を見つけたら、株を買って応援しています。明確な投資哲学があり、実績も伴っているアクティブ型(プロが運用し市場平均を上回る収益率を狙う)投信も同様です。日々の消費でも同じで、たとえばタオルひとつとっても、海外製の100円のものより多少高くても日本製のオーガニックなものを選ぶようにしています。それを作っている企業に売り上げが立つからです。

 そうした意識を持つ人が増えれば、投資は「短期で売買する」ものから「育てる」ものになっていくと思います。投信業界に目を向けても、一番すぐ変われる、そして変わらないといけないのは、作り手や売り手よりも買い手である投資家なんです。投信の純資産総額ランキングをみると、米国では運用期間が40年や70年といった歴史のある投信が上位に並んでいるのに対して、日本は新しいものばかり。しかも毎年顔ぶれが入れ替わっています。

 低コストのインデックス型投信や、Philosophy(投資哲学)、Process(プロセス)、Portfolio(ポートフォリオ)、People(人材)、Performance(パフォーマンス)の5つのPが見えるアクティブ型投信といった、資産形成のツールとして長く使える商品を育てていくのは投資家の役目です。私も1人の投資家として「1億人の投信大賞」や「投信ブロガーが選ぶ! Fund of the year」といった賞に関わり、そのお手伝いをしています。こうした活動を通して、投資が仕事でも趣味でもない、ふつうのビジネスパーソンが少しでも資産形成に関心を持ってくれたらと思っています。

(聞き手は電子報道部 森下寛繁)


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