「トマ・ピケティの新・資本論」トマ・ピケティ著、村井章子訳(日経BP社 2200円+税)

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【格差と資本主義】金融資本主義がもたらした中間層の転落
日刊ゲンダイ2015年5月12日

http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/159669/1

「トマ・ピケティの新・資本論」トマ・ピケティ著、村井章子訳(日経BP社 2200円+税)


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「トマ・ピケティの新・資本論」 トマ・ピケティ著, 村井章子著(日経BP社 2,376円税込)


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本書は、数年にわたってリベラシオン紙に連載していた時評をまとめたものである。この小さな本が日本語に翻訳され、日本の読者がいささかなりとも興味と関心を持っていただけるなら、たいへんうれしい。

ここに収めたテクストは、グローバル金融危機直後からその余波が尾を引く状況の中、またユーロ圏が深刻な信頼の危機に襲われ、デフレと景気後退に直面する中で、社会科学の一研究者が公の議論に参画し、政治や経済にまつわる時事問題を読み解こうとする試みを形にしたものである。

おそらく賢明なる読者は、自国の置かれた状況がヨーロッパといくらか似ていると気づかれることだろう。日本もまた巨額の公的債務を抱えているし、個人資産が急激に増えている点でもヨーロッパと共通する。だから本書は、日本の読者にもなにがしか役に立つと信じる。
本書が日本において有意義な議論を喚起するきっかけになれば、著者としてこれにまさる喜びはない。
(トマ・ピケティの日本語版への序文)

サルトルが創刊した左翼系日刊紙リベラシオンにピケティが2004年から2011年まで毎月連載して出版した「ヨーロッパは救えるか?」をベースに、2012年以降、今年6月までの最新コラムを加えて再編集した時論集。先行販売される『21世紀の資本』が700ページの専門書であるのに対し、本書は「子どもの値段」「相続税の余地」「経済における男性優位」「付加価値税を社会保障に充てるのは誤り」「オバマとルーズベルトの比較」など幅広い問題を取り上げており、ピケティ入門書として格好の内容となっている。フランス大統領オランドや経済危機にもまとまらないEU首脳などへの舌鋒鋭い批判が見どころ。その一部を紹介するとーー

●「資本主義は所詮、世襲財産で成り立っている」
●「金融規制緩和の結果、差引金融収支の世界合計はマイナス。これはあり得ない。タックスヘイブンのせいだ」
●「ゲイツと比較すると、ジョブズの財産は6分の1。ゲイツはウィンドウズの上がりで食べている不労所得者」
●「ある水準以上になると、投資リターンにより資産は加速的に増大する。この不平等を食い止めるには、国際的な累進資産税を設けるべきだ」

2013年9月24日のコラム「経済成長はヨーロッパを救えるか?」では、『21世紀の資本』の主要テーマである、資本収益率(r)>経済成長率(g)を取り上げ。「この不等式から、過去に蓄積された桁外れの規模の資産が自動的に富裕層に集中していくことが読み取れる。(中略)アメリカはもちろん、ヨーロッパでも、さらには日本でも。主に人口要因に起因する成長率の低下により、所得に比して資産の重みがかつてなく高まっている」と分析している。
  第1部(2005~2006年)
    ミルトン・フリードマンに捧ぐ
      
  第2部(2007~2009年)
    公的資金注入合戦
      
  第3部(2010~2011年)
    リリアンヌ・ベタンクールは税金を納めているのか?
      
  第4部(2012~2014年)
    経済成長はヨーロッパを救うか


トマ・ピケティの新・資本論
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トマ・ピケティ

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トマ・ピケティ 村井章子 日経BP社 日経BPマーケティン発行年月:2015年01月24日 予約締切


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発売日: 2015年01月24日頃
著者/編集: トマ・ピケティ, 村井章子
出版社: 日経BP社 , 日経BPマーケティン
サイズ: 単行本
ページ数: 414p
ISBNコード: 9784822250720

【内容情報】
資本主義はますます格差を拡大していく。どうするか?格差研究の気鋭、ピケティによるピケティ入門。

【目次】
第1部 (二〇〇五~二〇〇六年)ミルトン・フリードマンに捧ぐ
子供の値段
貧困撲滅のための国際課税 ほか
第2部 (二〇〇七~二〇〇九年)公的資金注入合戦
権利を謳えば効果はあるか?
サルコジの不可能な公約 ほか
第3部 (二〇一〇~二〇一一年)リリアンヌ・ベタンクールは税金を納めているのか?
憲法評議会と税
銀行の巨利は政治問題である ほか
第4部 (二〇一二~二〇一四年)経済成長はヨーロッパを救うか
累進制の一般社会税vs社会保障目的の付加価値税
フランスとドイツのちがい ほか

【著者情報】
ピケティ,トマ(Piketty,Thomas)
フランスの経済学者。1971年生まれ。パリ経済学校教授、社会科学高等研究院(EHESS)教授。EHESSとロンドン・スクール・オフ・エコノミクス(LSE)で博士号を取得。2013年出版したLE CAPITAL AU XXIe SIECLE(邦題は『21世紀の資本』みすず書房)が世界的なベストセラーとなり、一躍注目される。その所得格差拡大の実証研究は、リーマン・ショック後の世界経済危機で盛り上がった「ウォール街を占拠せよ」運動に大きな影響を与えた

村井章子(ムライアキコ)
翻訳家。上智大学文学部卒業

 世界的なベストセラーとなったフランスの若手経済学者による「21世紀の資本主義」。その著者が左派系日刊紙「リベラシオン」に連載した時事評論をまとめたのが本書だ。

 時期はサルコジ右傾化政権からEU金融危機を経てオランド左派政権が誕生するまで。著者は左右を問わず歴代政権の経済政策を快刀乱麻で批判する。

 特に深刻なのは全所得の半分以上を上位1割の人間で占有されるだけでなく、生産設備や金融資産、不動産といった資産の蓄積がGDP(国内総生産)の5倍から7倍にまでふくらんでいること。これらの資産が一部の特権者に独占され、格差が固定する「世襲資本主義」の登場となったのだ。