【日刊闇株新聞】  緊縮財政案を国民投票で否決 「ごね得」になりそうなギリシャ その2

【日刊闇株新聞】
緊縮財政案を国民投票で否決 「ごね得」になりそうなギリシャ その2
2015年07月09日

http://yamikabu.blog136.fc2.com/blog-entry-1467.html

緊縮財政案を国民投票で否決 「ごね得」になりそうなギリシャ その2

 本日(7月8日)の日経平均は638円安の19737円と急落しました。最大の理由は上海と深セン取引所で上場企業の4割以上が「自主的に」取引を停止しており不安から上海総合指数が続落しているからですが、国民投票後のギリシャ動向が依然として不透明なこともあります。

 本日は7月7日付け「同題記事」の続編ですが、そこに「ギリシャが国民投票で緊縮財政案を否決したからといって、なんでユーロ首脳が揃って国民投票の結果を尊重してギリシャに歩み寄らなければならないのか?」とのコメントをいただきました。

 これはギリシャのチプラス首相が「ユーロの仕組みや価値の安定」を人質にとって金融支援を要求したものの拒否されたので、今度は「民主主義」を人質にとったと考えるべきです。

 ユーロ首脳とすれば、国民投票の結果を無視すれば、そのままEU(ユーロ圏だけではありません)における民主主義を軽視することになり、古くはナチス、最近ではロシアの独裁を批判する姿勢と矛盾してしまうからです。

 国民投票は苦し紛れの時間稼ぎだったはずですが、「ただの小僧」と思っていたチプラス首相は、意外に政治的嗅覚が鋭いのかもしれません。

 最新の情報では、昨日(7月7日、現地時間、以下同じ)にギリシャはESM(欧州安定メカニズム)を活用する金融支援を口頭で求めており、本日(7月8日)にも債務削減を含む金融支援を正式に要請するようです。

 ESMはギリシャの2回の金融支援が行われたあとにスタートしているため、せっかくなのでその恩恵も受けようと考えているのでしょう。ギリシャは2010年以降、ユーロ圏におけるすべての種類の金融支援を受けています。

 これに対してユーロ首脳は金融支援の大前提として、明日(7月9日)までに緊縮財政案を提示するように求めていますが、当然にギリシャ側は「民意」を振りかざして緊縮案なしに金融支援だけを求めるはずです。
 
 どう考えてもまとまりません。早くもギリシャペースになっているような気がします。

 ギリシャとすれば、仮に支援決定に時間がかかりデフォルト(7月20日にECB保有のギリシャ国債・35億ユーロの償還があります)になっても、急に困るわけではありません。

 ギリシャにとって怖いのはデフォルトではなく、ECBからの緊急流動性支援(ELA)が止まったままとなることです。本日(7月8日)午前中の段階では、まだ上限枠が拡大されておらず、ギリシャの銀行も営業を再開できていません。

 それどころかECBは今週月曜日(7月6日)に、ELAを供給する際に銀行から徴収する担保の掛け目を引き下げてしまいました。つまりギリシャの銀行はELA残高(総額886億ユーロ)を維持するために「増担保」を要求されたはずです(休業中なのでどうしたのかはわかりません)。

 このELA枠の拡大を止められたままだと、ギリシャ経済は今週末(7月10日)にもパンクしてしまいます。

 ユーロ圏首脳は「民主主義」に対する配慮でギリシャに対して強く出られなくなったかもしれませんが、ECBは「銀行システムの安定維持」が最重要使命であるため、ギリシャ(の銀行)に対してはまた違った対応になるはずです。

 ECBの対応こそギリシャの命運を握っていることになります。

 長い目でみればユーロ圏で同じように財政問題を抱えている「もっと大きな国(具体的にはフランス、イタリア、スペイン)」でも、緊縮財政反対の世論が盛り上がる可能性があり、ユーロ(通貨)は長期的に低迷するかもしれません。

 これは評論家的に「ユーロの信認が低下する」と考えているからではなく、結局はユーロ安にしてフランス、イタリア、スペインあたりまでを「ユーロ経済を牽引する側」にしてしまわないと(現在はドイツとせいぜいオランダだけ)、ユーロ圏経済の辻褄が合わないと考えるからです。ギリシャはユーロ安でもユーロ高でも経済が回復するわけではないので、計算に入れないことです。

 つまりギリシャの国民投票の結果はユーロ安であり、最大の勝者はギリシャではなくドイツとなるはずです。

「欧州におけるドイツ」は、「アジアにおける中国」か?
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解説 文春新書編集部
本の話WEB2015.06.10 07:30

http://hon.bunshun.jp/articles/-/3782


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商品情報
書名(カナ) ドイツテイコクガセカイヲハメツサセル ニホンジンヘノケイコク
発売日:2015年05月20日
ジャンル:ノンフィクション
ページ数 232ページ
判型・造本・装丁 新書判
初版奥付日 2015年05月20日
ISBN 978-4-16-661024-2
Cコード 0295

作品紹介
冷戦終結と欧州統合が生み出した「ドイツ帝国」。EUとユーロは欧州諸国民を閉じ込め、ドイツが一人勝ちするシステムと化している。ウクライナ問題で緊張を高めているのもロシアではなくドイツだ。かつての悪夢が再び甦るのか?

担当編集者より
人口動態から、ソ連崩壊と米国衰退をいち早く予見した歴史家の新たな「予言」の書。冷戦終結とEU統合によって生じた「ドイツ帝国」は、当初もっぱら経済的だったのが、今日ではすでに政治的なものになっている、とトッド氏は指摘します。そしてウクライナ問題で緊張を高めているのも、ロシアではなくドイツで、「ドイツ帝国」がこのまま拡大すれば、いずれアメリカとも衝突しうる、と。インタビュー形式で読みやすく、しかも『悪童日記』の名訳者、堀茂樹さんによる素晴らしい翻訳で読める、日本オリジナル版です。

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「日本語に訳せば、日本の読者と日本の外交にもきっと役立つだろうと思い、ドイツ=ヨーロッパとアメリカについて述べた長いインタビューを送ります。末尾で日本についても言及しています」

 このメールをエマニュエル・トッド氏から編集部が受け取ったのは、二〇一四年九月のこと。本書収録の「1 ドイツがヨーロッパ大陸を牛耳る」がその翻訳である。これに加え、フランスの新聞・雑誌・インターネットサイトに掲載されたロシア、ウクライナ、ユーロなどをテーマにしたトッド氏のインタビュー記事を収録したのが本書である。

 最も重要な主題はドイツだが、「日本の読者にきっと役立つ」とトッド氏自身が述べているように、「『ドイツというシステム』は驚異的なエネルギーを生み出し得るのだということを認める必要がある。歴史家として、また人類学者として、私は同じことを日本についても、(略)言うことができる」(三〇頁)などと、随所に直接、日本への言及がある。

 同じ直系家族構造(長子相続と不平等な兄弟関係が特徴)のドイツと日本の比較もある。

「日本社会とドイツ社会は、元来の家族構造も似ており、経済面でも非常に類似しています。産業力が逞しく、貿易収支が黒字だということですね。差異もあります」(一五七頁)

「〔ドイツの〕輸出力が途轍もないとはいえ、技術の面で、たとえば日本のレベルには遠く及ばない」(二一三頁)

「日本の文化が他人を傷つけないようにする、遠慮するという願望に取り憑かれているのに対し、ドイツ文化はむき出しの率直さを価値付けます」(一五七頁)

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エマニュエル・トッド
Emmanuel Todd
1951年生まれ。フランスの歴史人口学者・家族人類学者。国・地域ごとの家族システムの違いや人口動態に着目する方法論により、『最後の転落』(76年)で「ソ連崩壊」を、『帝国以後』(2002年)で「米国発の金融危機」を、『文明の接近』(07年、共著)で「アラブの春」を次々に“予言”。『デモクラシー以後』(08年)では、「自由貿易が民主主義を滅ぼしうる」と指摘。


「最近日本へ行き、津波で荒らされた地域を訪れた(略)。日本人の伝統的社会文化の中心を成すさまざまなグループ──共同体、会社など──の間の水平の連帯関係が、事態に対応できなくなった政治制度に代わって、地域の再建・復興を支えていたのです。ドイツに比べ、日本では権威がより分散的で、つねに垂直的であるとは限らず、より慇懃でもあります」(一六一頁)

 さらに、「現在起こっている〔ウクライナでの〕衝突が日本のロシアとの接近を停止させている。ところが、エネルギー的、軍事的観点から見て、日本にとってロシアとの接近はまったく論理的なのであって、安倍首相が選択した新たな政治方針の重要な要素でもある」(七一頁)と、日本の外交についての、より踏み込んだ具体的な指摘もある。

 まずは本書のこういった点が日本の読者の関心を惹くだろう。

 しかし、本書の主題は何と言っても、冷戦終結後のドイツの擡頭が招きよせるヨーロッパの危機である。通常、ドイツに比せられるのは日本である。トッド氏も、同じ家族構造のドイツと日本の文化や経済システムの類似性を指摘しているのは、上に見た通りである。だが、地域の安全保障の問題として考えた場合、ドイツに比せられるのは、日本であるよりも、アジアにおける中国なのかもしれない。

 たとえば、「ドイツと比較される東アジアの国といえば、なにかについて日本が対象にされ、日本人自身もなんとなく日独両国の間には共通性が多いと思いこんでいる」と指摘する歴史学者の野田宣雄氏は、次のように述べている。

「だが、実際には、冷戦の終結を境として、日独両国は決定的に異なる道を歩みはじめるようになったと考えた方がよい。(略)統一後のドイツが明らかに『中欧帝国』形成の道を歩もうとしているのにたいして、日本には、東アジアで『帝国』を形成しようとする意志もなければ、そのための地政学的あるいは歴史的な条件も乏しいからである。結論を先にいえば、ヨーロッパにおけるドイツと同様に東アジアにおいて『帝国』を志向しているのは、中国であって日本ではない。(略)もちろん、ドイツのめざす『中欧帝国』と中国が志向する『中華帝国』とでは、その内容も性格も大いに違う。しかし、重要なのは、地域の中心部における『帝国』の建設にともなって、周辺の諸国家が深刻な影響を受けるという点では、ヨーロッパも東アジアも同じだということである。(略)その意味では、現在の日本がおかれている国際的な位置は、ヨーロッパにおけるドイツのそれよりも英、仏、伊といった諸国のそれと比定すべきであろう」(『二十世紀をどう見るか』文春新書)

 トッド氏によれば、ドイツの擡頭は、アメリカ帝国の衰退と連動している。

「一九四五年の勝利の遺産、アメリカによるヨーロッパの制御の鍵、それはドイツをコントロールすることだ(略)。二〇〇三年からのドイツの擡頭を確認すること、それはアメリカ帝国の崩壊の始めを確認することだった」(三一~三二頁)

 こうした地政学的な変化は、ヨーロッパに限られない。アジアも同様だ。「アメリカシステムとは、ユーラシア大陸の二つの大きな産業国家、すなわち、日本とドイツをアメリカがコントロールすることだ」(六一頁)とした上で、トッド氏は次のように言う。

「こんな体たらくのアメリカ、配下の国々がそれぞれの地域でおこなう冒険的行動をもはやコントロールできず、むしろ是認しなければならない立場のこのアメリカは、それ自体として一つの問題となっている。(略)アジアでは韓国が日本に対する恨み辛みのゆえに、アメリカの戦略的ライバルである中国と裏で共謀し始めている」(三四頁)

 しかし、トッド氏は、中国の「実力」について、「中国はおそらく経済成長の瓦解と大きな危機の寸前にいます」(一一八頁)と付け加えることも忘れない。

 というのも、「中国は、西洋資本主義の利益計算の道具」で、「西洋の企業からしてみれば、目にしたこともないような利潤をもたらしてくれる国」で、「西洋の資本主義にとって、中国を肯定的に言うことには利益がある」が、「共産党の指導者たちは、決して主人ではない」のであって、「彼ら自身も、自分ではコントロールできない力の支配下にある」からだ(「腐敗は『頭部』から始まっている」『中央公論』二〇一四年五月号)。

 したがって、経済面で中国が単独で覇権を握ることはないとトッド氏は見る。

「もう一つのシナリオは、ロシア・中国・インドが大陸でブロックを成し、欧米・西洋ブロックに対抗するというシナリオだろう。しかし、このユーラシア大陸ブロックは、日本を加えなければ機能しないだろう。このブロックを西洋のテクノロジーのレベルに引き上げることができるのは日本だけだから」(七一頁)

 では軍事力についてはどうか。

 中国は「軍事的パワーという観点から見て、未ださほど大きな存在ではない」(三五頁)とトッド氏は言う。

「二つの理由で〔日米との〕戦争は不可能です。米国の核兵器の存在と中国の軍事技術の水準の低さです。二年前に中国海軍に関する記事を読んだことがあります。中国はロシアから空母を購入し、その使い方を学んでいるとありました。それを読んで私が何を思ったか。この地域の最近の歴史を振り返ってみれば、ここには巨大な海軍力を有する二大国、すなわちアメリカと日本が存在していた、ということです。太平洋戦争とは、空母を使いこなし、空母を発明さえした二大国間の戦いだったのです。(略)もし中国軍が海洋に出て行き、勢力を拡張しようとすれば、海空戦を経験した世界でただ二つの国、日本とアメリカの同盟に向き合わなければならない、ということです。まったく馬鹿げたことです!」(「腐敗は『頭部』から始まっている」)

 しかし、見逃せないのは、擡頭するドイツと中国の接近であろう。

「『ドイツ帝国』は最初のうちもっぱら経済的だったが、今日ではすでに政治的なものになっている。ドイツはもう一つの世界的な輸出大国である中国と意思を通じ合わせ始めている。果たしてワシントンの連中は憶えているだろうか。一九三〇年代のドイツが長い間、中国との同盟か日本との同盟かで迷い、ヒトラーは蒋介石に軍備を与えて彼の軍隊を育成し始めたことがあったということを」(三七頁)

 二〇一五年三月に来日したドイツ首相のメルケル氏。二〇〇五年の首相就任以来、ほとんど毎年のように中国を訪問していながら、来日は実に七年ぶりのことだった。滞在中は、「歴史認識問題」をめぐる発言が話題になったが、訪日の真の目的はどこにあったのか(ロシアへの接近を図りたい安倍政権への牽制という見方もある)、東欧諸国との「和解」をめざした戦後ドイツの「東方外交」も、実は周到な計算にもとづくものではなかったか──こういった動きを読み解く上でも、本書は、多くのことを教えてくれるだろう。

 ここで示したのは、ヨーロッパの危機を主題とした本書を極東の日本で読むための「補助線」のひとつにすぎず、トッド氏の発言から何を読み取るかは、もちろん読者の自由である。

 本書の刊行を快諾していただいたトッド氏と、翻訳していただいた堀茂樹氏に謝意を表したい。

(「編集後記」より)