中国株、ギリシャ危機より恐い…投資家が最も怖れるアベノミクス「第4のリスク」とはなにか

山崎元「ニュースの深層」
中国株、ギリシャ危機より恐い
投資家が最も怖れるアベノミクス「第4のリスク」とはなにか
現代ビジネス2015年07月16日(木) 山崎 元

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44221


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〔PHOTO〕gettyimages

■最後にして、最大のリスク

公的年金資金と日銀のETF買い(年間3兆円)が下支えにあるとの安心感もあり、株式投資家はここしばらく概ね強気のムードの中にいた。とはいえ、リスクを全く考えていなかったわけではない。大方の投資家にとって、日本の株価水準そのものがバブル化するという根本的な要因を除くと、米国の利上げ、ギリシャ、そして中国が3つのリスク要因だった。

米国の利上げは、今年の年初から年央へ、さらに9月か、あるいは年末かといった調子で、予想を後に修正する形で実施が先送りされてきた。世界の投資マネーの潮目が変わる可能性があるので、引き続き油断は出来ないが、当面直ぐの心配事ではない。

ギリシャ、中国は、最近それぞれに気になるイベントがあった。ギリシャは、EU諸国による支援がどうまとまるか、引き続き心配な問題だが、1つには日本から見ると遠くの問題だし、もう一つには、そもそも国際的な債務問題は、債権国・債務国共に、0%か100%かではない間のどこかに「落とし所のある問題」なので、もともと大いに心配するには及ばない。前のショックの時のように、イタリアやスペインの国債も利回りが上昇するような事態になると心配だが、現在そうなってはいない。

中国は、上海株価の急騰、急落、そして政府による株価対策とめまぐるしい展開だ(当面、空売り規制の効果はあるようだ。確かに、中国のような国で「悪意の空売り」と認定されるのは怖い)。しかし、もともとの株価の上昇が脆弱なものだったことが分かったし、個人を主体としたバブルが崩壊しつつあるようだ。

中国のバブル崩壊(資産価格下落)は、遠くのギリシャよりも日本への影響が大きいが、中国の資産価格下落は、かつてのサブプライム問題などとは異なり、外国に金融的な影響が及ぶものではない。従って、バブル崩壊は、主として中国経済の成長率低下を通じて、実物経済チャネルで伝わってくるはずだ。

加えて、90年代初頭からの日本のバブル崩壊を思い出しても分かるとおり、バブルにはしばらく余熱があり、消費や生産が顕著に低下するまでには、小さく見積もっても1、2年の余裕がある。

ギリシャと中国は、懸念材料ではあるものの、向こうしばらくの間、日本の株価にとって致命的な悪材料ではなさそうだ。

以上のような訳で、「当面、問題は米国の利上げだけだ」と思っていたのだが、ここに来て4つ目のリスク要因が現れたかも知れない。安倍政権の意外に早い弱体化の可能性だ。

■安倍政権の支持率と株価の因果関係

安倍政権は、「株価連動内閣」などと揶揄されることもあるくらいで、株価を気にする政権だ。株価が安倍内閣の強弱に影響するという方向の因果関係はもともとあった。他方、安倍政権の弱体化が進むと、安倍政権の強弱が株価に影響する方向の因果関係が顕在化してくる可能性がある。

14日に発表された『朝日新聞』の世論調査では、安倍内閣に対する支持率が39%で不支持率が42%と、はじめて支持・不支持が逆転した。朝日の調査は、自民党政権に対して厳しい数字が出がちだが、13日に発表されたNHKの調査でも支持率は34.7%(前回比?1.1%)とやはり弱い数字だ。主に安全保障関連法案の問題、加えて新国立競技場を巡る不手際が響いていると見られる。

そして、安全保障関連法案は15日に衆議院で強行採決され、可決した。

安全保障関連法案の扱いを巡っては、安倍政権にとって幾つか拙い点が露わになった。多数の憲法学者から違憲とされたことが明らかになり、また、安倍首相が集団的自衛権に関する法案を通すと事前に米国に約束した形になったことも良くなかった。加えて、今回の強行採決と、安倍政権に対してもともと批判的なリベラル層だけでなく、意見の上で、彼らと、安倍政権を支持するナショナリスト層の間に位置する中間層が安倍政権に対して批判や懸念を増す公算が大きい。

さらに今後の審議を通じてどれだけ内閣支持率が下落するかは不確実だが、30%を割り込むようになると、多くの場合、政権は不安定化する。目下は自民党内で目立つことがない安倍政権に対する対抗勢力が形成される可能性が俄然現実味を帯びてくる。

当面、自民党内で安保関連法案に慎重な向きはおとなしくせざるを得ない状況にあるように見え、またメディアの政権批判も形式的でインパクトのないものにとどまっている。直ちに政権の圧力だと断定はしないが、内閣支持率が下がってから、反対派が声を上げ始めるのはよくあることだ。

集団的自衛権に関しては、軍事の専門家は賛成多数で、法律の専門家の間では違憲だとの考えが多数であるように見える。率直にいって、憲法を変えずに、時の内閣に武力行使の必要性に関する判断を任せる仕組みには無理があるし、国民の多数はそれを支持していない。集団的自衛権そのものに関して賛否半々としても、手続き論も含めると安倍政権の方針に対する反対が多いのが、目下の世論の大勢ではなかろうか。

過去の例を見ると、内閣支持率が30%を切ると、1年前後で政権が終わることが多い。今後の支持率次第だが、安倍政権が意外に早く弱体化するリスクについて、投資家はそろそろ考えはじめるべきではないかと思うのだ。

■短命リスクに備えよ

安倍政権の弱体化とは、アベノミクスの将来が曖昧になるということだ。アベノミクスは「期待」に働きかける政策なので、少なくとも株式市場的に、これはまずい。

たとえば、2018年に日銀では、黒田総裁、岩田副総裁が任期を迎えるが、彼らが再任されないような「期待」が市場に発生すると、かなりのマイナス効果だ。

また、安倍政権が弱体化すると、2017年の消費税率アップを確実に実施すると言い張るだけではなく、その後の財政再建強化を強調して(或いは、しばらく静かにしているとしても裏で財務省と握って)、財務省の支持を得ようとする対抗勢力が出て来て、彼らが次期政権の主導権を取る可能性が出てくる。

消費税率引き上げを先延ばしし、官僚の人事に関与を強め、経済財政諮問会議も役人の思い通りにさせない安倍政権は官僚集団にとって好ましい政権ではない。意外に短命になるリスクは考えておくべきだ。

加えて、安倍政権にとってプラス・マイナス両方に働きうるのが、新国立競技場を巡る問題だ。この問題の重要な発端が民主党政権時代のものであったことは確かのだろうが、国民はそのことに興味はない(同時に、意思決定論的に、それは正しい)。安倍政権は今、政権時代の民主党を批判してみても、「安倍政権も、民主党政権並みに建設的でないな」と国民に酷評されるだけだろう。

意思決定の問題として考えると、新国立競技場の問題については、既に起こってしまって変えられない不都合はサンクコスト(埋没費用)であり、今後変えられることに対して判断を集中すべきだ。安倍政権がこの問題を扱い損ねると、支持率の下落に拍車を掛けることになるだろうし、逆に、これをより低コストで現実的なプランに速やかに変更するよう上手く処理するなら、安保法制問題で失った支持率を回復ないし下支えする上で効果があるだろう。

株式投資家は、ここのところ、もっぱら外国の問題ばかりを心配してきた。しかし、当たり前だが、国内のリスクにも目配りは必要だ。安倍政権が不安定化する可能性は、その中で気に掛けておくべき材料の1つだろう。

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